学生調査員 No.001
武内ヨウスケYOSUKE TAKEUCHI
面白いこととオシャレな居酒屋が好き。金になるモノは何も持っていないが、大切にしたいイイやつらがいっぱい友達。
学生調査員 No.003
橋浦ケンタKENTA HASHIURA
天然ボケを隠したいが10秒話したらバレる。1日の多くをTwitterやNetflix、読書に費やしているため、情報の蓄積量は多い。
株式会社ナガセ 人事部樋口智行 TOMOYUKI HIGUCHI
42歳。東進ハイスクールなどを手がける株式会社ナガセの人事部における採用領域の責任者。日々、勉強。日本酒が好き。青山学院大学文学部英米文学科出身。大学生の頃は青学生らしく、何でもスマートにそこそこやっていた。ライフ・ワークミッション:世の中に教育・成長・働くことの意味・価値・喜びを明確に伝え、共鳴する仲間を増やし、社会を変革する。
―朝、道を歩く大人を見ると、みんなつまらなさそうな顔をしている。
まるでこれから向かう先が絶望しかないみたいだ。だから僕らも、期待するのをやめてしまった。働くって、つまんないし、それは仕方がないことだと思った。でも、本当にそうだろうか? 心の底から働くことが面白いと思っている人は、いるはずだ。
見つけたい。そんな人が生き生きと働いているところを見られたら、ぼくたちも、「こんな風に面白がって働きたい」と考えられる。そう思ってたら、ある人のことを思い出した。
大学のOB訪問会に来てくれた、日本酒をこよなく愛するその人は、「仕事は面白いよ」と口癖のように言っていた。
ナガセの樋口さん。会って、話を聞きたいと思った。
「面白い」という気持ちで働いていたわけじゃない。
- ヨウスケ
- 今日は快く受け入れてくださりありがとうございました。
株式会社ナガセ 樋口さんいえいえ。僕も楽しみにしてたよ。
- ヨウスケ
- いきなりだったのにすぐにメール返信してくださり、うれしかったです!OB訪問会のときに樋口さんがおっしゃっていた「仕事は面白いよ」という言葉がとても印象に残ってるんです。
株式会社ナガセ 樋口さんほんとにそうだからね。働くのって面白いよ〜 笑。
- ケンタ
- はい、働くって、面白いはずです! 面白いって思えるのは特別な人だからじゃなくて、みんながそう思えなければいけないです。
株式会社ナガセ 樋口さん断定的だね 笑。でも、そうだね、その通りだと思うよ。
- ヨウスケ
- でも多くの学生は働くが嫌なことだと思っています。お金という対価を得るためのつらい行為だと。そのつらい行為が少しでも軽減されるように、やりがいや好きなこととかと、給料のバランスのよい妥協点を探している。
株式会社ナガセ 樋口それはオトナのせいっていうのもあるかもね。
- ヨウスケ
- そうです!朝の電車の中のサラリーマンなんて、みんな絶望した表情してますよ。
株式会社ナガセ 樋口さんうん、たしかに 笑。
- ケンタ
- 僕は、もっと多くの人に、働くことが面白いって思ってほしいです。面白がって働いてほしいです。でも僕のこの思いって、アルバイトとかじゃなくて、実際に社会にでて働く、っていうのをしたことがないから考えられる、ただの青い理想なんですかね……?
株式会社ナガセ 樋口さんそんなことはないと思う。僕も働くことの喜びを伝えていきたいって思いがあるから。僕自身、働くって面白いよ、って心から言えるから。
- ケンタ
- ありがとうございます。
株式会社ナガセ 樋口さんこちらこそ、今日は来てくれてありがとう。
- ケンタ
- それでは、教えてください。仕事の何が面白いんですか?
株式会社ナガセ 樋口さん自分のやりたいことができるってところ。
僕は“人の成長”が好きなんだよね。そもそも教育の仕事についた理由も、人の可能性を引き出すこととか、人が成長をするきっかけとなりたいっていうのが大きいんだ。
- ヨウスケ
- 仕事なんだからやりたくないこと、面白くないこともやらなきゃいけないんじゃないですか?お金をもらう以上、好きなことだけを求めるのは不可能じゃないですか?
株式会社ナガセ 樋口さんそりゃあ面白くないこともあるよ。そもそも現在のような「面白い」という気持ちで働いていたわけでもないしね。
- ヨウスケ
- ……そうなんですか?
樋口さんは入社したときから、面白い!って言ってたのかと思ってました。
株式会社ナガセ 樋口さんまさか。もちろん嫌いじゃなかったし、好きで、望んで選んだ仕事だしね。でも、心の底から面白い! って思うようになったのはここ7年くらいの話だよ。
- ヨウスケ
- そんな……。(やっぱりじゃあ、下積み時代は我慢するしかないのか……)
なんで、面白いって思うようになったんですか?
株式会社ナガセ 樋口さん行動をするようになったから。あと、矢印を自分自身に向けるようになった。
- ケンタ
- それは、偉くならないとできませんか? 僕たちが入社してからすぐ、できるものなのでしょうか?
株式会社ナガセ 樋口さんできるよ。今すぐできる。
- ケンタ
- でも、矢印を自分に向けるって、どういう意味なのかわかりません。
株式会社ナガセ 樋口さん自分ゴト化、かな。会社とか、環境とかじゃなくて、自分自身を中心に据えること。
- ヨウスケ
- (いまいちよくわからないけど、とりあえず次の質問にいこう)
上司に言われた「樋口を何のためにプロジェクトに行かせたのか、しっかり考えろ!」という言葉。
- ケンタ
- 教育の仕事に携わりたいと思ったのはいつ頃からなんですか?
株式会社ナガセ 樋口さん小学生の頃かな。学校の先生への憧れがあって、ずっとそれは持ち続けてた。大学に入ったときに、昔お世話になった塾の先生が、うちで講師やらないかって誘ってくれて。
そこで公教育じゃない教育への関わり方に興味を持ったんだ。教育を変えるための自由なフィールドとして、新しい価値や教育をスピーディに作っていけるんじゃないかって思った。
- ヨウスケ
- それが今の会社で働くきっかけになったんですね。
(すごく真面目でまっすぐな人だ。これだけ志が高くないと、結局仕事を面白いとは思えないのかな……?)面白い!!って思うようになるまでの道のりはどんなだったんですか?
株式会社ナガセ 樋口さんそうだね。入社してから、ずっとスムーズにいってたんだ。順調にキャリアアップしていって、不満はなかった。成果もそれなりにだしてたんだよ。自分の中でだから、外からみたら遅いって思う人もいるかもだけど 笑。
30歳を過ぎた頃くらいからかなあ、壁にぶつかったのは。
- ケンタ
- 壁、ですか。
株式会社ナガセ 樋口さんうん、壁。成長する感覚がとまる感じ。
今考えると、仕事に前向きじゃなかったのかもしれない。ずっとモヤモヤが続いているというか、少し気持ち悪い感じ。
- ケンタ
- やらされている感じがして、あまり全力になれなかったってことですか?(きちんとやりたいことを見つけて働きはじめた人でも、そう思うことがあるんだ)
株式会社ナガセ 樋口さん手は抜いてなかった。成果もでてはいた。でも、モヤモヤは消えなかった。
- ヨウスケ
- どういう気持ちで仕事を続けていたんですか?
株式会社ナガセ 樋口さん与えられた仕事はやる。良く言えばミッション。悪く言えば義務感だった。この時期は働くを面白いとは思えていなかったかも。充実感がなくて、ずぅっと、やっぱりモヤモヤ 笑。
- ヨウスケ
- 与えられた仕事をきちんとやるのも、すごいと思います。充実感のなさはどうやって乗り越えたんですか?
株式会社ナガセ 樋口さん34歳のときに、日本で初めてのある国家人財育成プロジェクトが始まって、ナガセという会社から僕が代表として選考委員のメンバーになったんだ。そのときは人事として採用担当の責任者だったからという理由だけで僕が選ばれたのだと思っていた。だから、なんで“自分”が会社から行くように命じられたのか、深く考えようとはしなかったんだ。
プロジェクトはすごく面白かったよ。今も続いているんだけどね 笑。いろんな業界のいろんな人事の人にあったりとか、とにかく新しい人に会うのがとても刺激になったね。
最初プロジェクトに関わっていた頃は主体性はなかったんだ。でも、このプロジェクトのおかげで、自分ができること、できないことを改めて知ることができた。うちの会社では当たり前だと思っていた能力が、他では重宝されたり、その逆もあった。一度会社という枠から外れることで、自分自身を客観的にみられるようになったんだよ。
その経験と、上司から言われた「樋口を何のためにプロジェクトに行かせたのか、しっかり考えろ!」という言葉が、壁を乗り越えるきっかけになったね。
とにかく、やり続けること。発信し続けること。行動し続けること。
- ケンタ
- それが行動と自分ゴト化に繋がっていくんですね。
株式会社ナガセ 樋口さんそう!そこから、すべての物事の要因を会社に求めるのをやめて、自分に矢印を向けたんだ。
- ヨウスケ
- 要因、ですか?
株式会社ナガセ 樋口さん会社とか、環境が自分の価値を作るんじゃなくて、自分が自分の価値を作るんだと改めて気づいた。より主体的に、自分には何ができるのかを考えるようになったんだ。
自分の意味や価値は、自ら主体的に見出すことが大切だと肚落ちした。
- ケンタ
- 自分が自分の価値を作る。(大学や会社、役職とかの肩書きとか、他者からの評価を軸にするのではなく、自分にとっての価値を大事にしたんだ。でも、僕は肩書きも人の目もやっぱり気にしちゃうし、そう簡単にできることじゃなさそう……)
そこから何が変わったんですか?
株式会社ナガセ 樋口さんすごい変わったよ!行動するようになった。国家プロジェクトに、自分がどのように関わっていくか、自分の価値を徹底的に作るにはどうすればいいのかを考えた。
- ヨウスケ
- 行動する、ですね。(それならできるかもしれない)
具体的には何をしたんですか?
株式会社ナガセ 樋口さん行動量で差をつけようと思って、とにかく、プロジェクトに関係するものには片っ端から出席したよ。自分の休みの日とかも、イベントがあれば参加させてもらった。そのうちに、このプロジェクトを主催している人たちの熱い思いにあてられて、自分の気持ちも入ってくるようになったんだ。一度周りだした歯車は簡単にとまらないように、僕もどんどん行きたくて行きたくてしょうがなくなったの 笑。
そしたら、周りから評価されるようになった。周囲の視線とか肩書きを気にしないで、自分が自分のためにやりたいって思って行動したからこそ、評価が後からついてきた。自分が変わったら環境が変わるって、改めてわかった瞬間だったね。
- ヨウスケ
- そこから、働くって面白い! って思うようになったんですか?
株式会社ナガセ 樋口さんうん。人の成長にはずっと関心があったし、人の成長のためには自分も成長し続けなければいけないことは頭の中でわかってたんだ。だけど、行動レベルが低かった。行動することで自分も成長して、人の成長に関わって、多くの人に認められるようになった。そこから、人と繋がっていくことの面白さを知るようになったんだよね。行動したからといってすべてがうまくいくわけじゃない。けれど、行動して、新しい人や場との出会いを積極的に求めて、自分にとって意味のある偶然をどんどん生み出していくことが大切なんだ。
- ケンタ
- 偶然、っていうのは?
株式会社ナガセ 樋口さん今こうして僕らが出会えているのも、お互いの偶然の行動の結果でしょ?僕のライフ・ワークミッションにもなっている、「世の中に教育・成長・働くことの意味・価値・喜びを明確に伝え、共鳴する仲間を増やし、社会を変革する」 という意志が、君たちみたいな若い世代にも繋がっていっているって、今まさに感じられているよ。これも、行動をし続けなければありえなかったことだからね。こういう行動を積み重ねて、今日みたいな偶然をつくる。それが、「共鳴する仲間を増やす」ことにも繋がる。
- ケンタ
- もっと簡単に、広げられないんですかね? 意味とか、価値とか、喜びを。
株式会社ナガセ 樋口さんたしかに僕のやり方は泥臭いかもしれない。でも、いつか必ず変わるよ。いつだって非常識なやつが世界を変えてきたんだから。
- ヨウスケ
- 僕もそう思ってアルバイト先の働くをより面白くしようって頑張ってはいるんですけど、あんまりみんなに響いてる気がしないです。
株式会社ナガセ 樋口さん必ず変わるよ。とにかく、やり続けること。発信し続けること。行動し続けること。急がないで、慌てないで、やれることを目一杯やる。
僕は今だって行動し続けてるよ。勉強して国家資格をとったり、たくさんの大学を訪問したりするのも、その一例だね。全部、面白くてしょうがない。
- ヨウスケ
- (すごいなあ。ぼくも樋口さんみたいに、諦めないで行動し続けられるのかなあ)
大変そうです。
株式会社ナガセ 樋口さん動かないと、始まらないよ。子どもの頃って、いろんなものに興味を持って、身体が勝手に動いてなかった?コンロの青い炎をみて、熱いのかな、って思うだけじゃなくて、実際に熱いのかを確かめてやけどするとか笑 やってみて、そっから面白いか面白くないかを判断してたと思うんだよね。
行動が先で、心が変わることもある。だから、怯えないで動いちゃえばいいと思うよ。
- ケンタ
- ありがとうございます。今日は本当にありがとうございました。僕も、とりあえず行動するところから始めたいと思います。こうして樋口さんに会えてとてもよかったです。
株式会社ナガセ 樋口さん僕も楽しかったよ。もっとがんばろう、って思わせてくれてありがとう。
―誇れる目標があるわけでも、心からやりたいことがあるわけでもない。ただ漠然と、面白く働きたいと思っていた。だから、実際に働いていて、“面白く働く“樋口さんの話は、とても面白かった。きっとぼくらはみんな、臆病だ。最初の一歩が踏みだせずに、もやもやした気持ちを抱えている。
「こんな風に面白がって働きたい」
背中を押された気がした。今からできることを、知った。行動する。そうすれば、“面白い”は見つかるかもしれない。